1. 方針策定の背景と目的
当園は、職員が子どもたちの成長を願い、保護者や地域の皆様と深い信頼関係を築きながら、共に歩む場所です。しかし、近年、一部の利用者等による常軌を逸した言動が職員の精神的な不調や離職を招く深刻な事態が発生しています。
2025年(令和7年)施行の改正労働施策総合推進法では、カスタマーハラスメント(以下、カスハラ)対策が事業主の法的義務となりました。当園は、職員が安心して専門性を発揮できる環境を整えることが、結果として「子どもの最善の利益」を守り、質の高い保育を提供し続けるための最優先事項であると考え、本方針を宣言します。
2. カスタマーハラスメントの定義
当園では、厚生労働省の指針に基づき、以下の3つの要素をすべて満たす行為をカスハラと定義します。
- 第一要素:関係者の言動
- 関係者とは、顧客(潜在的な顧客も含む。)、取引の相手方(今後取引する可能性のある者も含む。)、
施設の利用者(今後利用する可能性のある者も含む。)その他事業に関係を有する者を指します。
- 第二要素:社会通念上許容される範囲を超えたもの
- 要求内容が妥当性を欠く場合、カスハラと判断されます。
- 要求の内容に妥当性があったとしても、その「手段・態様」が不相当なものはカスハラと判断されます。
- 第三要素:職場において行われ、職員の就業環境が害されるもの
- 職員が強い身体的又は精神的苦痛を感じ、保育・教育業務に支障をきたす状態を指します。
- 園内での対面対応だけでなく、送迎時の停留所、SNS上のやり取り、閉園後の電話対応等、業務に関連するあらゆる場面を含みます。
3. 対象となる行為の類型
幼保現場の特性を考慮し、特に以下の行為を禁止します。以下はあくまでも例示であり、これらに限られるものではありません。
- 身体的・精神的な攻撃:暴力、突き飛ばし、大声での恫喝、人格否定、名誉毀損にあたる暴言。
- 威圧的・拘束的な言動:土下座の要求、長時間にわたる居座りや電話、執拗な攻め立てや質問、連絡帳やメールへの過度な返信強要。
- 不当な要求:社会通念上過剰な慰謝料請求、特定職員の異動や解雇の要求、教育方針への過度な介入、契約内容を著しく超えたサービス提供の要求。
- プライバシー侵害とデジタルハラスメント:職員の無断撮影・録音、SNSへの誹謗中傷、実名公表を含むプライバシーに係る情報のSNSへの投稿、「SNSに晒す」といった脅迫。
4. 組織としての対応原則
カスハラ事案が発生した際、当園は「職員個人の忍耐」に依存せず、組織として以下の通り毅然と対応し、職員を保護します。
- 組織的対応の徹底:職員を孤立させず、必ず複数名での対応や管理職による介入を行います。
- サービスの制限・中止:カスハラに該当する場合は、対応を中止し、必要に応じて退園(利用契約の解除)を含めた法的措置を検討します。
- 証拠の記録と保存:正確な事実把握のため、やり取りの録音・録画、ハラスメント記録シートによる詳細な記録を実施します。
- 外部専門家との連携:自力での解決が困難な場合は、顧問弁護士、警察、自治体等の外部機関と速やかに連携し、厳正に対処します。
5. 職員の保護と職場環境の整備
職員の安全配慮義務を履行するため、以下の体制を運用します。
- 相談窓口の可視化:職員が被害を一人で抱え込まず、迅速に報告・相談できる内部又は外部の窓口を設置します。
- 被害職員への包括的ケア:精神的ダメージを受けた職員に対し、メンタルヘルス休暇、カウンセリング、必要に応じた配置転換等のサポートを行います。
- 不利益取扱いの禁止:ハラスメント被害を相談したことや都道府県労働局に対し援助等を求めたことを理由に、職員に解雇等の不利益な扱いをすることは一切ありません。
- 継続的な啓発活動:職員向けの研修を実施し、職場におけるカスタマーハラスメントの内容及び対処の内容を周知するとともに、全職員の対応スキル向上とメンタル耐性の強化を図ります。
6. 保護者・地域の皆様へのお願い
質の高い保育サービスは、保護者の皆様と園との相互の敬意と信頼関係の上に成り立ちます。正当な苦情や要望に対しては誠実に耳を傾け、改善に努めてまいります。しかし、一部のハラスメント行為は、その職員だけでなく、同じ園で過ごす多くの子どもたちの安全な生活をも脅かすことになります。すべての子どもたちが健やかに育つ環境を守るため、本方針へのご理解とご協力を心よりお願い申し上げます。